鎌倉ではたらく太守のブログ

愛犬家で歴オタ、うつつなき者の備忘録。湘南ベルマーレを応援中。

前原一誠と萩の乱〜勇あり、智あり、誠実人に過ぐ。

ぶつぶつと文句をいいながら大河ドラマ「花燃ゆ」をみるのは、いいかげんに嫌になってきた。今週は、久坂玄瑞の隠し子が出てきて、辰路さんと美和が親権をめぐるバトルを繰り広げ、少し視聴率が回復したようじゃが、大河ドラマとしてはいかにも邪道じゃな。もっとも来週は、前原一誠萩の乱なので、かねてからここまではせめて見届けようと決めておったのじゃが、どこまで期待してよいのやら……

まあ、ともかく、きょうは前原一誠について。
 
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前原一誠天保5年(1834年)、長州藩士・佐世彦七の長男として生まれ、のちに前原氏を相続する。通称は八十郎、彦太郎。一誠という名は「至誠にして動かざる者は、未だ之れ有らざるなり」という『孟子』の言葉、吉田松陰の教えからつけたといわれておる。ちなみに、松下政経塾出身、衆議院議員前原誠司氏は名前も似ているし、なんか関係があるのかと思ったけど、とくにそういうこともなさそうじゃ。ただ、ご両親は鳥取県出身だそうで、かつては毛利の領土だったことから、なんか関係があるのかもしれん。

それはともかく、安政4年(1857年)、佐世八十郎(前原)は吉田松陰の下で久坂玄瑞らとともに学んでいる。しかし、その期間はわずか10日程度。それでも松陰は前原を、「八十、勇あり、智あり、誠実人に過ぐ」「その才は実甫久坂(玄瑞)に及ばず、その識は暢夫高杉晋作に及ばず、而してその人物の完全なること二子も亦八十に及ばざること遠し」と賞し、その誠実さを愛したという。

松陰の死後は、文久2年(1862年)に脱藩し、久坂らと共に直目付・長井雅楽の暗殺を計画。高杉晋作の功山寺挙兵にはいち早く駆けつけ、四境戦争では小倉口で奮戦している。戊辰戦争では干城隊を率いて北越戦争に出兵し、河井継之助の長岡藩と戦った。

維新後は越後府判事(次官)を勤めるが、兵火と水害に苦しむ人々をみるにみかねて年貢半減を実行し、さらに信濃川の分水計画を立案する。これは吉田松陰が説いた「仁政を民に施し、刑罰を省き、税斂を薄うする」という「仁政」の実践であった。じゃが、財政が逼迫していた政府にとっては、それどころの話ではない。「あいつを越後においておくと勝手なことをする」と考えた木戸孝允は、前原を参議として中央政府に呼び戻す。現実路線で近代化を急ぐ木戸と理想論で仁政を説く前原の路線の違いは明確で、ちょうど薩摩の大久保利通西郷隆盛と同じ構図じゃな。

そして明治2年11月30日、山口藩では旧諸隊を解散するにあたり諸隊士が蜂起する事件が起きた。前原は穏便な処置を主張したが、木戸はこれを武力で討伐。そう、奇兵隊をはじめ、戊辰を戦った隊士たちは使い捨て。木戸や伊藤俊輔井上聞多品川弥二郎らが位人臣を極めているのに、わずかな報奨金でごまかされ、挙げ句の果てにこのザマである。この事件で、木戸と前原との対立は決定的になったにちがいない。

その後、政府は版籍奉還、廃藩置県、秩禄処分などの諸政策を推し進め、士族の生活はいよいよ困窮し、不平はさらに高まっていく。前原はこの間、大村益次郎の死後、兵部大輔を兼任していたが、「国民皆兵」(徴兵制)を支持する山県有朋と対立し、けっきょく萩へ下野してしまう。まあ、山県有朋なんぞは前原にしてみれば松下村塾の仲間とはまったく認めてなかったじゃろう。

萩に戻った前原のもとには不満を持つ士族たちがどんどん集まってくる。とくに北越戦争で苦楽をともにした隊士たちは、前原を「神輿」として担いでいく。このあたりも西郷とそっくりじゃ。

明治7年、江藤新平佐賀の乱が起きる。そして明治9年、神風連の乱秋月の乱がおこると、10月27日、前原は同志とともに「殉国軍」を結成。ついにこれに呼応して決起する。奇しくもこの日は、吉田松陰の18回目の命日。玉木文之進はあるとき、「松陰が生きていれば命をかけて政府に意見したであろう」と語ったというが、前原の心にもそんな思いがあったんじゃろう。じゃが、殉国軍は政府軍の総攻撃であっという間に鎮圧される。進退窮まった前原は日本海沿いを東上し、天皇に直訴しようと試みるが、島根県宇龍港に入ったところを島根県警に捕縛され、萩で処刑されてしまうのじゃ。享年43。 

吾今国の為に死す、死すとも君恩に背かず。
人事通塞あり、乾坤我が魂を弔さん。

これは前原の辞世の詩といわれておる。前原は17歳のとき、落馬して足を骨折、胸を強打する大怪我を負い、後遺症が残ったという。これが前原の心の傷となったが、同時に人への思いやり、弱者へのやさしさを育むことにつながったともいわれている。

前原はおそらく清廉潔白な熱血漢だったんじゃろう。もっとも、そんな男が中央政界で出世していくのは無理じゃろう。現代の会社組織にもこういう男はたしかにおるが、正直、もっと上手に、ゆるりとやればよかったのに、とも思うんじゃが。

閑話休題佐藤隆太さんは前原一誠をいい感じで演じていると思う。次回、どんな最期をみせてくれるのか、期待して待ちたいと思う。これがつまらなかったり、刺身のつまのような描かれ方じゃったら、もう「花燃ゆ」は見ないからな!


(´-`).。oO(まあ、せわあないか…)