北条高時.com

うつつなき太守(なりきりです)による歴ヲタの備忘録

「士農工商」も「四民平等」も、もはや教科書に載ってない件

いやいや、おったまげた。いまの教科書には「士農工商」って載ってないんじゃな。昨日、Twitterではじめて知ったよ。東京書籍のWebサイトによると、平成12年度の教科書から、すでに削除されているそうじゃが、これは衝撃じゃった!

小学校社会科に対するQ&A

f:id:takatoki_hojo:20160503171546j:plain

これまでも、鎌倉幕府の成立が1192年(いい国)から1185年(いい箱)に変更されていたり、「聖徳太子」が「厩戸王」になっていたり、日本最初の貨幣が和同開珎ではなく富本銭だったり、仁徳天皇陵の呼び名が変わっていたり、教科書の記述が変わってきていることは知っておった。じゃが、この件については、ほんと、びっくりしたぞ。

<ご参考>

いまでこそ江戸時代を暗黒史観で論じる人は少なくなっておるものの、それでも「士農工商」は江戸時代のダークな面を連想させる最たる言葉のひとつじゃ。それが教科書に載ってないというんじゃからな。大げさにいえば時代の見方とか理解をを大きく変える可能性すらあるわけじゃよ。少なくともわしは、「士農工商」は江戸時代の過酷な身分制度で、明治維新により「四民平等」となって、ようやく日本の近代がスタートしたと教えられた。いまこうして、好き勝手できているのも西郷さんや大久保さんのおかげというふうにな。

じゃが、「士農工商」というのは、本来は「職業全般」「民衆一般」、平たく言えば「みんな」という程度の意味で、おっさん世代が教わってきたように、その順番で厳しく階級づけされていたということではないというのじゃ。

先の東京書籍のWebサイトでは、教科書から「士農工商」の記述がなくなった理由について、こう説明している。

1点目は、身分制度を表す語句として「士農工商」という語句そのものが適当でないということです。史料的にも従来の研究成果からも,近世諸身分を単純に「士農工商」とする表し方・とらえ方はないし、してきてはいなかったという指摘がされています。基本的には「武士-百姓・町人等,えた・ひにん等」が存在し、ほかにも、天皇・公家・神主・僧侶などが存在したということです(中略)。

2点目は、この表現で示している「士-農-工-商-えた・ひにん」という身分としての上下関係のとらえ方が適切でないということです。武士は支配層として上位になりますが,他の身分については,上下、支配・被支配の関係はないと指摘されています。特に、「農」が国の本であるとして、「工商」より上位にあったと説明されたこともあったようですが、身分上はそのような関係はなく、対等であったということです(後略)。

わし、「江戸幕府は、農民は暮し向きも厳しく重労働じゃから工商に転身されると穀物の生産に支障をきたすから武士のつぎとし、反対に商人は、金持ちになってのさばってくると困るので一番下の身分にしたんだよ」と習って、テストの答案にもそう書いた覚えがあるんじゃがwww

f:id:takatoki_hojo:20160503181221j:plain

ちなみに「百姓」という言葉も、もともとは「農民」だけをさすのではなく、漁業や林業など、いろいろな職業に従事する者という意味だったらしい。そのため、今の教科書には「武士」「町人」「百姓」という表記が使われているとのこと。うーん、これも知らんかったわ。「百姓」って言葉は農民への差別用語で、あんまり使わないほうがよいというふうに思い込んでおったぞ。

もっとも江戸時代に身分制度がなかったというわけではない。「花は桜木人は武士」じゃからな。とはいえ「士農工商」の解釈を変える以上は、明治新政府の「四民平等」も、そのままの記述ではいられないわけで、現在ではすでにこちらも教科書から削除されておる。

「四民平等」の語は、明治政府の一連の身分政策を総称するものですが、公式の名称ではないので,この用語の理解自体が重要な学習内容とは必ずしもいえません。むしろ、従来の「江戸時代の身分制度を改めて四民平等とし」との記述に比べ,現在の教科書の「江戸時代の身分制度を改めて,すべての国民は平等であるとし」との記述の方が、近代国家の「国民」創出という改革の意図をよりわかりやすく示せたとも考えております。

へ〜、迂闊にもまったく知らんかった。いやいや、当たり前だと思っていた歴史の知識も、資料が発見されたり研究がすすむにつれて、どんどん変わっていくというわけじゃな。蒙古襲来も神風で勝ったわけじゃないとかね。こうなってくると、いつかわしの暗愚呼ばわりも見直される日が来るかもしれんから、引き続き研究をすすめていくことにしよう。

ふと思ったんじゃが、じつは「鎌倉幕府」という言葉もすごくあやしいんじゃよ。というのも、足利時代徳川時代はいざ知らず、少なくとも当時は鎌倉でも京都でも、「鎌倉幕府」なんて言葉をだれひとり使っていなかったんじゃ。じゃから、ひょっとしたら教科書から「鎌倉幕府」という言葉自体がなくなるときがくるのかもしれんぞ。単に「鎌倉政権」とか、そんなふうにな。

閑話休題、いずれにせよ、こどもたちに「お前、士農工商も知らないのか!」なんて偉そうに講釈たれて馬鹿にされないよう、おっさん世代は注意が必要ということじゃな。