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うつつなき太守(なりきりです)による歴ヲタの備忘録

「真田丸」が最終回。家康には家康の、信繁には信繁の大義があった!

大河ドラマ真田丸」が最終回。いやいや、さすが「真田日本一の兵」。戦場で源次郎と三十郎が槍を合わせる場面に感極まり、高梨内記の最期のシーンに涙腺決壊。してやられたわい。しばらくは真田丸ロスを発症する者が続出するじゃろうな。

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これだけ人気で高視聴率のドラマの最終回だけあって、見所は満載。いちいちあげるとキリがないので割愛するが、クライマックスはやはり、徳川家康真田信繁が直接対峙した場面じゃろう。まるで川中島の謙信信玄のように、信繁は単騎で徳川本陣につっこみ、鉄炮の照準を家康に合わせる。

家康「殺したいなら殺すがよい。されど、わしを殺したところで何も変わらん。徳川の世はすでに盤石。豊臣の天下には戻らん。戦で雌雄を決する世は終わった。おぬしのような戦でしか己の生きた証を示せぬ手合いは、生きていくところなどどこにもないわ!」

信繁「そんなことは百も承知!  されど、私はお前を討ち果たさねばならぬのだ。わが父のため、わが友のため、先に死んでいった愛する者たちのために!!」

「源次郎、いいから早く引き金を引けよ」という指摘はごもっともじゃが、それは野暮というもの。けっきょく「真田丸」の全50回は、この場面に収斂されるわけじゃな。

前回の放送で上杉景勝徳川家康に「お心のうちにやましさがあるのでは? この戦に大義がないことが気になるのではござらぬか」と問い、家康が話を打ち切った場面があった。たしかに、方広寺鐘銘事件や大坂城の堀を埋め立ててしまったりした家康には、そうしたやましさはあったかもしれない。

じゃが、豊臣秀頼大坂城にいては自分の死後の将来に禍根を残す。豊臣の天下を簒奪しようとする狸親父の徳川家康に、真田信繁後藤又兵衛毛利勝永らが敢然と立ち向かうというストーリーこそが大坂の陣の醍醐味じゃが、徳川には徳川の大義がある。じっさい、道理が見えている天下の諸大名は秀頼に同情しつつも、ことごとく徳川に臣従している。家康が将軍になってからすでに10年以上もたっているし、豊臣恩顧の武将もすでに代替わりし、今では徳川の恩を受けている。上杉景勝伊達政宗ら歴戦の強者どもも、いまさら戦国の世に戻りたいとは思っていない。秀頼公もどこかの一大名として、おとなしくしていてよ、といったところじゃろう。

それでも信繁は戦いを挑む。「わが父のため、わが友のため、先に死んでいった愛する者たちのために」。信繁は豊臣秀吉の馬廻衆。父・昌幸とは別に1万9000石の知行をもらっていただけに、秀吉への恩義は深かったはず。そんな信繁が狸親父の家康に立ち向かい、颯爽と戦場を駆け抜ける姿は、判官贔屓の日本人の心を打つ。じゃが、信繁は死に花を咲かせるために戦ったわけではない。大坂城はもはや丸裸じゃが、幸い徳川勢の士気は低い。家康さえ討ち取れば徳川勢は瓦解する。そこで豊臣に有利な条件で和議を結ぶ。信繁の戦略は明確じゃった。

慶長20年5月6日未明、豊臣勢は道明寺で徳川勢を迎え撃つ作戦を立てる。じゃが、 濃霧のため信繁の到着が遅れ、後藤又兵衛は奮戦虚しく討死。信繁は誉田で伊達政宗と激しい銃撃戦となる。このとき信繁は「関東勢百万と候え、男はひとりもなく候」と、徳川勢を煽り、味方を鼓舞しながら大坂城へと撤退したという。ドラマでは、政宗が「弾切れじゃ」と追撃をとりやめていたが、このあと信繁が妻子を政宗に託すのは史実のとおり。信繁の血脈は仙台真田氏として現代へと受け継がれることになるのじゃが、これはまたあらためてかきたいと思う。

かくして翌7日、豊臣勢はさいごの決戦に臨む。天王寺口に真田信繁毛利勝永大野治長が、岡山口に大野治房が布陣。徳川勢が出てきたところを背後へ迂回した明石全登が挟撃するという作戦じゃ。戦いの序盤は豊臣勢が徳川勢を圧倒。とくに毛利勝永の奮戦は凄まじく、「惜しいかな、真田を云いて毛利を云わず」と後世讃えられるほどの活躍で本多忠朝を討ち取る。そして信繁がこの期に乗じて松平忠直隊に突撃を敢行。しかも混乱のさなか、浅野長晟が豊臣勢に寝返ったとの虚報が流れると、徳川勢は総崩れとなる。「三方ヶ原にて一度御旗の崩れ申すより外、あとさきの陣にも、御旗の崩れ申す事なし」(『三河物語』)。一時は家康も自害を覚悟したほどの劣勢だったと伝わっている。

家康の首まであと一歩と迫った信繁じゃったが、数度の突撃で兵力は消耗し、さいごは徳川勢に押し返される。 信繁は四天王寺近くの安居神社で越前松平家中の西尾宗次に討ち取られ、豊臣秀頼淀殿も炎の中で自刃。大坂落城とともに150年にわたる戦国乱世は終結し、世は元和偃武を迎えるのじゃ。

なお、真田信繁淀殿の最期については、こちらの記事も読んでいただければ幸いじゃ。

ということで「真田丸」は本日をもって終了。今はわし、完全に真田丸ロス。今日は感想を書くつもりじゃったが、万感胸に迫って言葉にならんのよ。それにしても、これだけ盛り上がった大河というのも近年珍しいのう。やはり、登場する一人ひとりの人物が主役が霞むほどに立っていたのが理由じゃろう。三谷幸喜が描く戦国の人物は、男も女もみな陽性で愛すべきキャラばかり。このあたり、鎌倉や太平記の時代のドラマでは太刀打ちできんわ。
来年の主役は井伊直虎。真田て比べると同じ戦国時代とはいえ、どうしても地味な印象が否めないが、はたしてどうなることやら。制作、広報スタッフのプレッシャーはでかいじゃろうよ。おまけに分家とはいえ井伊家から「直虎は男だった」という資料がみつかったと、まさかのちゃぶ台返しの発表があったし。「いや、こちらはドラマだから…」とNHKも苦しいコメントだしているけど…前途多難じゃな。