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うつつなき太守(なりきりです)による歴ヲタの備忘録

この度、贈与税が非課税となった「三種の神器」について

天皇陛下の退位を認める皇室典範特例法が成立した。終身在位を定めた明治以降で初めて、光格天皇以来約200年ぶりの退位が実現する。いうまでもなく天皇陛下の「お気持ち」表明を受けてのことじゃ。

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皇室典範特例法が成立

この特例法によって退位後、陛下は「上皇」、皇后陛下は「上皇后」となる。報道によると、退位の時期については2018年12月下旬、皇太子殿下が新天皇として即位し、2019年元日改元で調整がすすんでいるとか。もちろん天皇誕生日も12月23日から2月23日に変更となる。

さて、この特例法の成立で「三種の神器は非課税」という点がネット界隈で妙な注目を集めておる。終身在位が前提のため、三種の神器相続税は非課税という規定はあっても贈与税については規定がなかった。そのため、今回、あらためて贈与税も非課税ということを決めたわけじゃが、神聖なる皇位継承にかかわる三種の神器が、ほうっておけば課税対象になるという俗っぽい話に、みな白目になったというわけじゃな。

三種の神器とは

ということで、今日は三種の神器について備忘的に書いておこうと思う。

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三種の神器とは、天孫降臨にあたり、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が天照大神(あまてらすおおみかみ)から授けられた八咫鏡八尺瓊勾玉天叢雲剣草薙剣)のことじゃ。

八咫鏡(やたのかがみ)は、天照大神が天の岩戸に隠れたときに石凝姥命が作ったという鏡。天照大神が岩戸を細く開けたとき、この鏡をつかって外におびきよせて、世は再び明るくなったという鏡じゃな。この鏡は後に天照大神から瓊瓊杵尊に授けられ、実物は伊勢神宮の内宮にあるという。また形代(レプリカ)は宮中三殿賢所に安置されている。

八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)は玉祖命が作ったとされる。やはり岩戸から天照大神を引き出すために、八咫鏡とともに使われたらしい。こちらは現物が皇居の「剣璽の間」にあるとか。

天叢雲剣は、須佐之男命が出雲で倒したヤマタノオロチの尾から出てきた剣じゃ。実物は熱田神宮にあるが、やはり形代が皇居の「剣璽の間」に安置されている。

わが国では、天皇が即位するにあたり、八尺瓊勾玉の実物と八咫鏡のの形代が受け渡されることで、皇位継承の証しとされてきた。もちろん例外もあって、後鳥羽天皇は、源平合戦で平家が安徳天皇を奉じて西国へ逃れた際に三種の神器を持ち去ったために、神器なしで即位している。ちなみに壇ノ浦に水没した三種の神器のうち、天叢雲剣はみつからず、義経殿は頼朝公に大目玉をくらっている。また南北朝の争乱では、後鳥羽天皇を先例として後光厳天皇後円融天皇後小松天皇の3人は神器無しで即位している。

三種の神器世に傳こと、日月星の天にあるにおなじ

そんな例外はあるものの、「三種の神器」は皇位継承の正統性を保証するシンボルともいうべき神聖なものといえるじゃろう。南朝の忠臣・北畠親房は、「神皇正統記」で三種の神器についてつぎのように述べておる。

三種の神器世に傳こと、日月星の天にあるにおなじ。鏡は日の體なり。玉は 月の精なり。剣は星の氣なり。ふかき習あるべきにや。

親房は「三種の神器」は、空に日、月、星があるのと同様に、この国にふつうに、当たり前のように伝わってきたものだと説く。そして鏡は「正直の本源」、玉は「慈悲の本源」、剣は「知恵の本源」と解釈し、天皇のもつべき徳を表明したものでもあるとする。つまり、天皇三種の神器を継承しながら、その徳をもって皇統をつないできたのと同様に、日本人もまたこうした徳を連綿と受け継ぎながら、この国をつないでいくのだという祈りがこめているようにも思えるんじゃよ。天皇は日本国、日本国民統合の象徴じゃからな。そんな三種の神器に贈与税でんでんといっても、そもそも資産価値なんぞ算定できるわけもなし。

なお、天皇陛下の退位については、陛下一代限りの特例法ではなく、皇室典範そのものを改正すべき、という意見もあった。じゃが、皇室典範改正となると、女性・女系天皇女性宮家の問題も議論せねばならず、とんでもない時間がかかるわけで、今回は特例法での対応が妥当じゃとわしは思う。なお、特例法成立にあたっては「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等について」検討するという付帯決議がなされておる。眞子様江ノ島王子とのご婚約がいわれておるし、この問題は国体に関わる大問題じゃと、わしも思うておる。

とはいえ、わしは女性天皇は賛成(容認)じゃが、女系天皇は反対じゃ。少なくとも現時点ではな。この話はまたいずれ。